ニコンの超解像顕微鏡に関して


 ニコンが開発・販売の超解像顕微鏡(N-SIM, N-STORM)のデモ機を、当センターでは平成24年度と26年度の2度にわたって設置し、どちらも大好評となりました。
 このページはその際の案内用に作成いたしましたが、超解像顕微鏡の案内として、今後も掲載いたします。そのため現在は機器はございませんし、平成26年度の設置の際の内容が基となっておりますことを、あらかじめご理解ください。




  光学顕微鏡では、光の「波の性質」による光学限界で約200nmという分解能の限界があります。そのためこれ以上は、どれだけレンズをたくさん挿入しても、またはズームで拡大しても、詳細な構造を見ることはできません。
  一方で各種電子顕微鏡を用いますと、上記の分解能よりも詳細な観察は可能ですが、観察方法の特性のため生きた細胞サンプルを用いることはできず、"ある瞬間を凍結した固定サンプルの観察"となってしまいます。そのため、生きている細胞内で起こる生物現象をリアルタイムに観察することはできませんでした。また電子顕微鏡で優れた画像を取得するには、サンプル作成や観察に熟練したテクニックを要するほど難しく、研究者が「ちょっと思いついたときに、簡単に」画像を取る手法とは至っておりません。
  そのため近年になって各顕微鏡メーカーでは、更なる分解能で観察を行う「超解像顕微鏡」の開発を行っており、平成26年のノーベル化学賞の受賞もあって、非常に大きな注目を集めております。

  ニコンでは独自の「構造化照明」による観察法を開発し、これにより空間分解能を従来の光学顕微鏡の約2倍(約120nm)程度に向上させ、生細胞内の微細構造の超解像による可視化を実現した超解像顕微鏡システム「N-SIM」を発売しております。他の超解像観察法では更に分解能が高いものもございますが、このN-SIMは高速で画像取得が可能で、光ダメージが弱いという特長からタイムラプス観察に向いており、更に蛍光色素を大きく選ぶ他の手法と比較すると、スタンダードなGreen,Red,Deep-Redの蛍光なら観察が可能(今回のデモ機の場合はこの3帯域です。搭載のレーザーに依ります)であるというのも、大きな長所です。
  このN-SIMは販売開始から間もないうちに、雑誌「The Scientist」誌で2011年におけるトップイノベーションの第5位にランクインし、世界的に非常に注目が集まっている観察機器といえます。

  このN-SIMのデモ機は平成24年にも設置して既に大好評となりましたが、更に平成26年度の今回は「N-STORM」での観察も可能な台機となっております。
通常の蛍光観察法では、「強い光の照射のため、視野内の全分子が同時に励起する」ことになります。そのため近隣する蛍光分子を"分けること"ができず、分解能が制限されてしまいます。そこでN-STORMでは近接分子が同時に励起して光らないよう、非常に弱い光を照射することで、分子1個に由来する蛍光画像を取得します。このようにして取得した数千枚の画像から、分子1個の位置を正確に把握した高分解能の画像を再構築する手法です。
  このN-STORM法では、したがって数千枚の画像取得が必要なため少し時間がかかり、現在は生きた試料の観察はできませんが、従来の十分の一、20nmの分解能という、他の追随を許さない高分解能が達成できます(このN-STORMの原理が、平成26年のノーベル化学賞の対象となりました)。そのため、電子顕微鏡のユーザーの方でも、満足のゆく出来映えの画像が取得できると思われます。
※観察方法の詳細は、以下のリンクよりメーカーサイトもご覧ください。

  ニコンイメージングセンターでは平成24年に続き、この超解像顕微鏡システム(N-SIM/N-STORM)のデモ機を平成26年10月から設置しており(10月中旬以降から、N-STORMも可能となりました)、希望者は無料で試用・観察が可能としておりました。

ニコン:超解像顕微鏡 N-SIM
ニコン:超解像顕微鏡 N-STORM
ニコン:暮らしに生きる製品技術:超解像顕微鏡システム(N-SIM)の紹介
ニコン:暮らしに生きる製品技術:超解像顕微鏡システム(N-STORM)の紹介
Nikon MicroscopyU: Superresolution Microscopy:さまざまな超解像観察法の原理から応用までが載ってます(*英語です)。

N-SIMの特長

  • 他の超解像観察法では、"かなり蛍光試薬を選ぶ"傾向がありますが、N-SIMでは搭載レーザー(488nm,561nm,640nm)で励起可能な一般的な蛍光色素/蛍光タンパク質で観察ができます。
  • タイムラプス/Z-スキャン観察が、通常の蛍光観察と同様に可能。当センターの共焦点顕微鏡(Station-1)をご利用の方は、おそらくすぐに操作可能です。


N-STORMの特長

  • 特定の蛍光色素(現在(*平成26年)ではAlexa647が最適。その他の数種)での標識が必要となり、還元剤を添加するため生きた細胞の観察はできないものの、分解能:20nmは、蛍光観察がベースのシステムでは最高級です。
  • 今回のデモ機には、405, 488, 561, 647nmの4本のレーザーが搭載されており、STORM観察で専ら利用される蛍光色素以外でも、観察を試してみることも可能です(ただし405nmのレーザーはSTORMでの刺激用のため、DAPIやHoechstなどは用いることはできません)。
※デモ機の主なスペック
  • 画像取得モード: 3D-SIM(XYZ超解像), TIRF-SIM(全反射での超解像観察) / STORM, 3D-STORM
  • N-SIM用の搭載レーザー: 488nm, 561nm, 640nmの3種類
    N-STORM用の搭載レーザー: 405nm(刺激用), 488nm, 561nm, 647nm
  • 顕微鏡: ニコンの倒立顕微鏡 Nikon:Ti-E (パーフェクトフォーカスシステム内蔵)
  • 対物レンズ: 60倍レンズ(水浸; NA:1.27), 全反射用100倍レンズ(油浸; NA:1.49)
  • CCDカメラ: Andor社 EM-CCDカメラ iXon


N-SIMによる超解像イメージと落射蛍光イメージとの比較
※ 画像例1〜5では画像をクリックすると拡大画像が、画像6では超解像観察による動画が表示されます。
※ またN-SIMで作成される超解像画像の解像度は、1024×1024となります。ここでは表示の関係上、拡大表示でも512×512としておりますことを、あらかじめご了承ください。


: ミトコンドリアをMitoTracker-Redで染色したHeLa細胞(生細胞)
左:通常の落射蛍光観察
右:N-SIMによる超解像観察
対物レンズ: Nikon CFI Apo-TIRF 100xH (NA:1.49)

サーモフィッシャーサイエンティフィック社がご提供の、FluoCells#2(製品番号:F14781)サンプル
  (Texas-Redでアクチンを、BODIPYでTuburinを染色したウシ肺動脈内皮(BPAE)細胞)
左:通常の落射蛍光観察
右:N-SIMによる超解像観察
対物レンズ: Nikon CFI Apo-TIRF 100xH (NA:1.49)


  3・4サーモフィッシャーサイエンティフィック社がご提供の、FluoCells#1(製品番号:F36924)サンプル
  (Alexa488でアクチンを、MitoTracker-Redでミトコンドリアを染色したウシ肺動脈内皮(BPAE)細胞)
  左:通常の落射蛍光観察
  右:N-SIMによる超解像観察
  対物レンズ: Nikon CFI Apo-TIRF 100xH (NA:1.49)

サーモフィッシャーサイエンティフィック社がご提供の、FluoCells#4(製品番号:F24631)サンプル
  (細胞核をSytox-Greenで、アクチンをAlexa568で染色したマウス腸切片サンプル)
左:通常の落射蛍光観察
右:N-SIMによる超解像観察
対物レンズ: Nikon CFI Apo-TIRF 100xH (NA:1.49)



  : 試薬による蛍光染色で、微細構造を可視化したCOS7細胞のタイムラプス観察
  (約10秒ごとに画像取得し、5分間の観察).
  対物レンズ: Nikon CFI Apo-TIRF 100xH (NA:1.49)